Gitとは?「ファイル消失」を防ぐ履歴管理の仕組みとメリット

結論: Git(ギット)とは、プログラムやファイルの変更履歴を保存・管理するための「分散型バージョン管理システム」です。

一言で言えば、「いつでも過去の状態に戻れる、超高性能なタイムマシン」

複数人で一つのファイルを編集しても「誰が、いつ、どこを、なぜ変えたのか」がすべて記録され、編集内容が衝突しても安全に統合できる仕組みを持っています。プログラミングに限らず、現代のデジタルプロダクト開発において欠かすことのできないインフラのような存在です。

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なぜGitが必要なのか?「バックアップ」との決定的な違い

Gitを知る前は、ファイルを保存する際に「企画書_20231001.docx」「企画書_最終.docx」「企画書_本当に最終_修正版.docx」といった名前をつけて管理していたかもしれません。しかし、この方法には限界があります。

  • 「最新」がどれか分からなくなる
  • 過去の特定のバージョンに戻すのが困難
  • 2人で同時に編集すると、どちらかの変更が消えてしまう

Gitを使えば、ファイル名は「企画書.docx」のままで、すべての履歴を内部に保持できます。

Gitが解決する3つの問題

  • 「あ、間違えた!」を即座に取り消せる
    ファイルを誤って削除したり、コードを書き換えて動かなくなったりしても、1秒で正常な状態に戻せます。
  • 「なぜこうしたんだっけ?」がわかる
    各変更には「理由(コミットメッセージ)」を添えるルールがあるため、半年後の自分やチームメンバーが見ても意図が伝わります。
  • 「パラレルワールド」を作れる
    「本番用のコード」を維持したまま、「新機能の実験」を別ルートで進めることができます。実験が成功したら本番に合流させ、失敗したらそのルートごと消し去ればいいのです。
Yachi

開発の仕事をしていると、「昨日は動いていたのに、今日触ったら動かなくなった」という事態に必ず遭遇します。Gitがなければ、原因特定に数時間を要するところですが、Gitがあれば「昨日との差分」をコマンド一つで表示できるため便利です。

Gitの仕組みを支える「3つの場所」

Gitを使いこなす上で最も重要なのが、ファイルが今「どの状態にあるか」を理解することです。Gitには大きく分けて3つのエリアが存在します。

1. ワークツリー(作業ディレクトリ)

あなたが今、実際にファイルを編集している場所です。パソコン上のフォルダそのものだと考えてください。

2. ステージングエリア(インデックス)

「次の保存(コミット)に含めるファイル」を一時的に登録する場所です。
「10個のファイルを直したけれど、今回はこの3個だけを一つの履歴として保存したい」といった微調整を行うための緩衝地帯です。

3. リポジトリ

変更履歴が正式に記録される「保管庫」です。ここにデータが入ることで、初めて「タイムマシン」の記録として保存されたことになります。

保存の流れ:

  • ファイルを書き換える(ワークツリー
  • 保存したいファイルを選ぶ(ステージング
  • 記録を確定する(リポジトリへコミット)
Yachi

初心者の方が最初につまずくのが、この「ステージング」という工程です。「保存するなら一気にやってよ」と思うかもしれませんが、関連のない修正を一つの履歴に混ぜてしまうと、後で「特定の修正だけを取り消したい」と思ったときに苦労します。料理に例えるなら、皿に盛り付ける前に「味見をして、出すものを決める」工程のようなものです。

Gitの核心機能:ブランチとマージ

Gitを単なる「履歴保存ツール」から「最強の共同作業ツール」に押し上げているのが、ブランチ(Branch)という概念です。

ブランチは「枝分かれ」

「本番公開用」の太い幹から、自分専用の「枝」を伸ばします。この枝の上では何をしても幹には影響しません。

  • メリット: 他の人の作業を邪魔することなく、自由にコードを書き換えられる。
  • リスク: 複数の枝で同じ箇所を書き換えると、後で「衝突(コンフリクト)」が発生する。

マージは「合流」

枝での作業が終わったら、その内容を幹に統合します。これをマージと呼びます。Gitは賢いので、別々の箇所を直していれば自動で一つにまとめてくれます。

コンフリクト:唯一の怖いイベント

もし「Aさんが10行目を直し、Bさんも同じ10行目を直した」状態でマージしようとすると、Gitは「どっちを優先すればいいか分からない!」とエラーを出します。これがコンフリクト(衝突)です。
これはエラーというよりも「人間が判断してください」という Gitからのメッセージです。落ち着いて中身を確認し、正しい方を残せば解決します。

よくある誤解:GitとGitHubは別物

「Gitを使っています」と言うと「ああ、GitHubのことね」と返されることがありますが、これらは全くの別物です。

項目GitGitHub
正体ツール(ソフトウェア)サービス(プラットフォーム)
役割自分のPCで履歴を管理するネット上で履歴を共有・保管する
場所ローカル(あなたのPC内)クラウド(サーバー上)
例えExcelそのものOneDriveやGoogleドライブ

Gitは、手元のPCで動く管理ツールです。
GitHubは、Gitのリポジトリをインターネット上に預かってくれる場所です。GitHubを使うことで、世界中のプログラマーとコードを共有したり、レビューし合ったりすることが可能になります。

Yachi

「Gitは難しいけど、GitHubの画面なら操作できる」という人もいますが、本来は逆であるべきです。Gitというツールの仕組みを理解していれば、GitHubだけでなくGitLabやBitbucketといった他のサービスもすぐに使いこなせるようになります。まずは「手元のファイルをどう管理するか」というGitの基本に集中しましょう。

GitHubについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェック!

実務でGitをどう使う?具体的なワークフロー

プロダクト開発における一般的な流れ(Gitフローの簡略版)をイメージしてみましょう。

  • リポジトリを準備する
    既存のプロジェクトに参加する場合は、サーバーからデータを自分のPCにコピーします(クローン)。
  • 枝を作る
    「お問い合わせフォーム修正」といった名前で、新しいブランチを作ります。
  • ひたすらコードを書く
    キリの良いところで、変更を記録します(コミット)。「何を直したか」をメッセージに残します。
  • サーバーに送る
    自分のPCに溜まった記録を、GitHubなどのサーバーへアップロードします(プッシュ)。
  • レビューしてもらう
    「この変更を合流させていいですか?」と仲間に依頼を出します(プルリクエスト)。
  • 合流させる
    OKが出たら、本番用のブランチに統合します(マージ)。

このサイクルを、チーム全員で毎日何十回、何百回と繰り返します。

Gitと並んでモダンな開発に欠かせないツール「Docker」についてはこちら。

注意点:初心者がやりがちな「Gitのミス」

Gitは強力ですが、慣れないうちは冷や汗をかくような失敗も起こり得ます。

1. 巨大なファイルをコミットしてしまう

Gitはテキストファイルの差分管理が得意ですが、数GBある動画ファイルや高解像度の画像などの管理には向いていません。一度リポジトリに入れてしまうと、プロジェクト全体が重くなり、クローンに時間がかかるようになります。
対策: .gitignore という設定ファイルに、Gitの管理から外したいファイル(動画、パスワード設定、一時ファイルなど)を記述しておきます。

2. 「プッシュ」する前に「プル」を忘れる

他の人がサーバー上のデータを更新しているのに、古いデータの上に自分の変更を重ねようとするとエラーになります。
対策: 作業を始める前や、サーバーに送る前には、必ず最新の状態を取り込む(プル)癖をつけましょう。

3. コミットメッセージが適当

「修正」「update」「aaa」といったメッセージは最悪です。1ヶ月後のあなたは、その「修正」が何だったのかを絶対に覚えていません。
対策: 「ログイン画面のバリデーションエラーを修正」のように、具体的かつ簡潔なタイトルを心がけます。

Yachi

困ったときは「git status」というコマンドを打ちましょう。「今、自分はどこにいて、何が起きているのか」をGitが教えてくれます。多くの混乱は、自分の立ち位置を見失うことから始まります。

生成AIとGitの関係

最近では、ChatGPTなどのAIを使ってGitを効率化するケースが増えています。

  • コマンドを教えてもらう: 「特定の日時以降の変更履歴だけを抽出するコマンドは?」と聞けば、複雑なオプションを即座に回答してくれます。
  • コミットメッセージの自動生成: 変更した差分(diff)をAIに読み込ませて、「この変更に適切なコミットメッセージを英語で書いて」と頼むことで、記述の手間を省くことができます。
AIに効率的な指示を出すための「プロンプトエンジニアリング」の基本はこちら。

まとめ

  • Gitは「履歴のタイムマシン」。過去のどの状態にも戻れ、変更の経緯がすべて残る。
  • ワークツリー、ステージング、リポジトリの3つのエリアを意識することが上達への道。
  • ブランチを活用することで、安全に並行開発ができる。
  • Gitはツール、GitHubは置き場所。この違いを明確に理解する。
  • 失敗しても大抵のことは取り返せるので、恐れずにコミットを繰り返す。

Gitをマスターすることは、エンジニアとしての「基礎体力」を身につけることです。最初は黒い画面(ターミナル)での操作に戸惑うかもしれませんが、仕組みさえ理解してしまえば、これほど頼もしい味方は他にいません。

まずは、自分のパソコンにGitをインストールし、小さなテキストファイル一つから管理を始めてみることをお勧めします。

この記事を書いた人

生成AIコンサルタント / テックリード

外資系IT企業にて社内の生成AI活用推進と
生成AIプロダクト開発リードを担当。

かつてはWeb系のエンジニアとして、
モダンな技術スタックでのシステム開発から
数百億レコード規模のデータベース運用までを
フルスタックに経験。

「コードも書けるコンサルタント」として、
活用論と実装論の両面から、
現場で使えるIT知識を発信します。

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