結論: サーバーレスとは、開発者が物理的・仮想的な「サーバーの構築や管理」を一切意識せず、プログラムを実行できる仕組みのことです。
「サーバーが不要(レス)」という意味ではなく、「サーバーの保守運用をクラウド事業者に丸投げする」という考え方を指します。
サーバーレスを「水道」にたとえて理解する
サーバーレスの仕組みは、私たちの生活になくてはならない「水道」にそっくりです。
かつて、もし家で水を使いたいと思ったら、自分で井戸を掘り、ポンプをメンテナンスし、水質を管理する必要がありました。これが、従来の自社サーバー(オンプレミス)での運用です。
現代の水道はどうでしょうか。
- 蛇口をひねれば、すぐに水が出る。
- 使った分だけ料金を払えばいい。
- 浄水場や配管の複雑なメンテナンスは、水道局がすべて代行してくれる。
サーバーレスはこの「水道」と同じです。エンジニアは「蛇口(プログラム)」を書くだけでよく、背後の配管(サーバーのOSアップデート、メモリの増設、セキュリティ対策)はすべてクラウド事業者が行います。
Yachiサーバーレス最大のインパクトは「運用の悩み」からの解放です。以前は深夜にサーバーがダウンして呼び出されることもありましたが、サーバーレス構成であれば、基盤側のトラブル対応はクラウド事業者の仕事になります。
なぜ「サーバーレス」が必要なのか?
従来のサーバー運用とサーバーレスを比較すると、その圧倒的な効率の良さが見えてきます。
1. サーバーの「空焚き」がなくなる
従来のサーバー(仮想サーバーや物理サーバー)は、リクエストが全くない時間帯でも、常に電源をオンにして動かし続けなければなりません。車をアイドリング状態にしているようなもので、使っていなくてもコストが発生します。
一方、サーバーレスはプログラムが動いた時間だけ課金されます。1ヶ月に1回しか動かない処理なら、その数秒分しか料金がかかりません。
2. 急なアクセスの増加に「勝後に」耐える
例えば、テレビ番組で紹介されてWebサイトにアクセスが急増したとします。
通常のサーバーだと「アクセス過多でパンクする」ことがありますが、サーバーレス(特に主要なFaaS)は、アクセス数に合わせて自動的に実行環境を増やして対応します。これを「オートスケーリング」と呼びます。
3. セキュリティアップデートの手間がゼロ
サーバーを保有していると、OSの脆弱性が見つかるたびにパッチを当てる作業が必要です。サーバーレスでは、OSそのものが抽象化されているため、開発者がOSのパッチ管理を心配する必要はありません。


サーバーレスの主要なサービス
具体的にどのようなサービスが「サーバーレス」と呼ばれているのか、代表的なものを挙げます。
FaaS (Function as a Service)
プログラムの「関数(一塊の処理)」を登録しておき、特定のイベントが発生した時にだけ実行させる仕組みです。
- AWS Lambda: 最も有名で普及している。
- Google Cloud Functions: Google Cloud上で動く。
- Azure Functions: Microsoftのクラウドサービス。
BaaS (Backend as a Service)
データベースや認証など、アプリに必要な「裏側の機能」をサーバー構築なしで利用できる仕組みです。
- Firebase: アプリの認証やリアルタイムデータベースを簡単に作れる。
- AWS Amplify: サーバーレスなバックエンドを統合的に構築できる。


知っておくべき「コールドスタート」問題
サーバーレスは完璧な技術ではありません。必ず議論に挙がるのが「コールドスタート」という弱点です。
サーバーレスは、プログラムが呼ばれていないときは「眠っている(リソースが確保されていない)」状態です。
久しぶりにリクエストが来た時、クラウド事業者は急いで実行環境を立ち上げます。この「立ち上がりにかかるコンマ数秒〜数秒の遅延」をコールドスタートと呼びます。
- 影響を受けるケース: ユーザーが直接操作する Web画面の表示など、1秒の遅延がストレスになる場面。
- 影響が少ないケース: データの集計処理、画像の縮小加工、ログの転送など、数秒の遅延が問題にならない裏側の処理。
Yachi最近では、常に最小限の環境を維持しておく有料オプション(プロビジョニング済み並列性など)も登場していますが、コストとのトレードオフになります。「何でもかんでもサーバーレス」ではなく、適材適所の判断が求められます。
サーバーレスが向いていること・向いていないこと
技術選定の際に、サーバーレスを選ぶべきかどうかの判断基準を整理します。
向いているケース(サーバーレスが輝く場面)
- イベント駆動の処理: 「ファイルがアップロードされたら縮小画像を作る」「毎日12時にメールを送る」といった単発の処理。
- 新規事業のスモールスタート: アクセスが少ないうちは無料枠や数円の課金で済み、伸びてきたら自動でスケールするため、ビジネスの初期フェーズに最適です。
- APIサーバー: 頻繁に呼び出される軽量なAPIの構築。
向かないケース(注意が必要な場面)
- 非常に長い処理: 多くのサービスには「15分以内」などの実行時間制限があります。数時間かかるようなデータ変換などには向きません。
- 超低遅延が求められるシステム: 前述のコールドスタート問題があるため、1ミリ秒を争うような金融取引などには適しません。
- 常にフル稼働するシステム: 24時間365日、高い負荷がかかり続ける場合、サーバーレスよりも通常のサーバーを借りっぱなしにした方が安くなることがあります。
似ている用語との違い
開発でよく混同される概念との違いを比較表にしました。
| 用語 | 管理の対象 | 課金体系 | スケーリング |
|---|---|---|---|
| 仮想サーバー (EC2など) | OS, ミドルウェア, アプリ | 時間貸し (固定費に近い) | 手動または設定次第 |
| マネージドサービス (RDSなど) | アプリの設定のみ | 時間貸し + ストレージ | 自動、またはスペック変更 |
| サーバーレス (Lambdaなど) | プログラムコードのみ | 実行回数・時間 (変動費) | 完全自動 |
生成AIとサーバーレス
昨今の生成AI(LLM)ブームにおいても、サーバーレスは重要な役割を果たしています。
AIのモデルを呼び出す処理や、ユーザーからの入力をAIに渡すためのブリッジとしてAWS LambdaやFirebaseなどが多用されます。AIの活用は「リサーチ段階ではあまり使わず、本番運用で爆発的にリクエストが増える」といった波が激しいため、従量課金でオートスケーリングが強力なサーバーレスと非常に相性が良いのです。


まとめ:サーバーレスの本質は「価値への集中」
サーバーレスを導入する最大の理由は、単なるコスト削減ではありません。
ITエンジニアにとって最も価値があるのは、「ユーザーに届けるためのコードを書くこと」です。
- サーバーの再起動
- メモリの監視
- ネットワークの設定
これらの「インフラの運用管理」は重要ですが、それ自体が新しいサービスを生むわけではありません。サーバーレスを採用することで、こうした付随的な作業をクラウド事業者に任せ、エンジニアは「本来作りたかった機能」の開発に 100% の時間を注げるようになります。
この「開発効率の劇的な向上」こそが、現在のプロダクト開発においてサーバーレスが選ばれる真の理由です。
Yachiサーバーレスは、もはや特殊な技術ではありません。クラウド時代の標準的な選択肢(デフォルト)になりつつあります。初めて触れる方は、まずは関心のある簡単なスクリプトをAWS Lambdaなどで動かしてみることから始めるのが、理解への一番の近道です。
