LLMの正体は「巨大なしりとり」?仕組み・弱点・生成AIとの違い

結論: LLM(大規模言語モデル)とは、膨大なテキストデータを学習し、「次に来る確率が最も高い言葉」を予測することに特化したAIです。

ChatGPTの登場以来、毎日のように耳にするようになった「LLM」という言葉。直訳すれば「大規模な言語モデル」ですが、その実体は知能を持った人間のような存在ではなく、統計学を極限まで突き詰めた「巨大なしりとりマシン」に近いものです。

この記事では、LLMの仕組みを「しりとり」に例えて紐解きながら、なぜこれほどまでに自然な対話ができるのか、そして私たちが実務で使う際に知っておくべき「弱点」や「使いこなしのコツ」を網羅的に解説します。

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LLMの正体は「超高性能なしりとり」

LLMを理解する上で最も直感的な例えが「しりとり」です。ただし、単なる単語のしりとりではありません。文脈や過去の膨大なデータから、次に続く最も適切な言葉を推測し続けるしりとりです。

例えば、AIに「空が」という入力を与えたとしましょう。
LLMは、学習した膨大なテキストデータから統計的に判断します。

  • 「青い」が続く確率:80%
  • 「高い」が続く確率:10%
  • 「割れた」が続く確率:0.01%

この中から確率の高い「青い」を選択し、次は「空が青い」という文脈から、その後に続く言葉(「ので、洗濯物を干した」など)をさらに予測します。この一連のプロセスを高速で繰り返すことで、あたかも人間が思考しているかのような自然な文章が生成されます。

Yachi

LLMには、人間のような「感情」や「真実を理解する能力」は備わっていません。あくまで「この言葉の後には、この言葉が来ることが多い」という統計パターンの塊であることを意識すると、後述する「もっともらしい嘘」の理由も納得しやすくなります。

LLMを支える3つの要素:大規模・言語・モデル

なぜ「LLM(Large Language Model)」と呼ばれるのか。その名前を分解すると、技術的な特徴が見えてきます。

1. 大規模(Large)

ここでの「大規模」とは、主に2つの意味を指します。

  • 学習データ量: インターネット上のウェブサイト、書籍、論文、プログラムコードなど、人類がこれまでに蓄積したテキストデータの大部分。
  • パラメータ数: ニューラルネットワークにおける「調整ツマミ」のようなものです。近年のモデル(GPT-4など)では数千億〜数兆個に達すると言われており、この数が多ければ多いほど、複雑な文脈を理解できるようになります。

2. 言語(Language)

LLMは文字通り「言葉」を扱います。しかし、コンピューターは文字をそのまま処理できません。そのため、文章を「トークン」という小さな単位(単語や文字の一部)に区切り、それぞれを数値のベクトルに変換して計算しています。

3. モデル(Model)

特定の入力に対して、特定の出力を出すための「仕組み」や「計算式」のことです。現在のLLMのほとんどは、2017年にGoogleが発表した「Transformer(トランスフォーマー)」というアーキテクチャを採用しています。これにより、文中の遠く離れた言葉同士の関連性を同時に処理できるようになり、長い文章でも文脈を壊さずに理解することが可能になりました。

「Transformer」や「ディープラーニング」の仕組みを詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

生成AIとLLMは何が違うのか?

「生成AI(Generative AI)」と「LLM」は混同されがちですが、これらは「カテゴリ」と「エンジン」の関係にあります。

  • 生成AI: コンテンツ(文章、画像、動画、音声、プログラムなど)を新しく作り出すAIの総称。
  • LLM: 生成AIという大きなカテゴリの中に含まれる、「テキスト生成」に特化した技術基盤

現在、多くのチャット型AI(ChatGPTなど)は、LLMをメインエンジンとして使いつつ、画像を生成したり音声を認識したりする他のAIモデルと組み合わされて動いています。

主要なLLMの比較:どれを選べばいいのか

現在、世界中でさまざまなLLMが開発されています。仕事やプライベートで活用する際に、どのモデルがどのような特性を持っているかを知っておくことは非常に重要です。

モデル名開発元特徴・得意分野
GPTOpenAI論理的思考力と多機能性のバランスが良い。
ClaudeAnthropic自然で人間らしい文章。長文の読み込みが得意で、コーディング能力も極めて高い。
GeminiGoogleGoogleエコシステムとの連携。膨大な量のドキュメント(数千ページ分)を一気に処理できる。
LlamaMetaオープンソース(厳密にはライセンス制)。自社サーバーに構築してカスタマイズが可能。
Yachi

「どれが最強か」という議論は絶えませんが、正直なところ用途によります。あくまで例であり、個人の好みでも変わってきますが、アイデア出しならClaude、複雑なプログラミングのデバッグならGPT、Googleドキュメントの内容を整理したいならGeminiといった使い分けが考えられます。

LLMの最大の弱点「ハルシネーション(幻覚)」

LLMを利用する上で避けて通れないのが、「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」です。

先述した通り、LLMは「次に来る確率が高い言葉」を選んでいるだけであり、出力内容が事実に即しているかを検証しているわけではありません。そのため、自信満々な口調で、存在しない歴史上の人物や架空の製品スペックを語ることがあります。

なぜハルシネーションが起こるのか

  • 学習データにない情報の推測: 自分が知らないことでも、それまでの文脈から「ありそうな答え」を生成してしまう。
  • 情報の混ざり合い: 似たような名前の別の事象と情報を混同してしまう。
  • 確率の揺らぎ: 創造性を出すための設定(Temperature/温度感)を高くすると、あえて確率の低い言葉を選び、結果として嘘が混じることがある。
Yachi

専門用語の解説や歴史的事実、プログラミングのライブラリの仕様などを聞く際は、必ず公式ドキュメントや信頼できるソースで裏取りをするのが鉄則です。LLMは「検索エンジン」ではなく、あくまで「文章構成・変換エンジン」として捉えるのが賢明です。

避けては通れない「トークン」と「コスト」の概念

実務でLLMのAPI(アプリケーションから呼び出す仕組み)を利用する場合、文字数ではなく「トークン数」で課金されます。

  • 英語: 1単語 ≒ 1〜1.3トークン
  • 日本語: 1文字 ≒ 1〜2トークン(ひらがなや漢字で異なる)

日本語は英語に比べて1文字あたりのトークン消費量が多くなる傾向にあります。
また、LLMには「コンテキストウィンドウ(文脈長)」という制限があります。これは、一度に処理できる情報の限界量のことです。あまりにも長い過去の会話履歴やドキュメントを読み込ませようとすると、古い内容から忘れてしまったり、エラーが発生したりします。

「トークン」の仕組みや数え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

実務での活用シーン:LLMをどう使いこなすか

単に「チャットで質問する」以外にも、仕事でLLMを活かせる場面は多岐にわたります。

1. コーディング補助

GitHub Copilotなどのツールを通じて、LLMはエンジニアの強力なパートナーになっています。

  • 関数の雛形作成
  • テストコードの自動生成
  • エラーログの解析と修正案の提示

2. 文章の構造化と要約

散らばった議事録や大量のメールスレッドを渡し、「箇条書きで3点にまとめて」「JSON形式で出力して」といった指示を出すのは、LLMが最も得意とする作業の一つです。

3. RAG(検索拡張生成)による自社データの活用

LLMが学習していない最新情報や、社内の非公開ドキュメントに基づいて回答させたい場合に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という手法が使われます。
「質問に関連する社内文書を検索し、その内容を添えてLLMに投げる」という仕組みを構築することで、ハルシネーションを抑えつつ専門的な回答を得ることが可能になります。

「RAG」や「ファインチューニング」の違いと使い分けについてはこちらの記事をチェック!

知っておくべきリスクと注意点

LLMは魔法の杖ではありません。実務で導入する際には以下のリスクを考慮する必要があります。

データプライバシーとセキュリティ

入力したデータがAIの学習に利用される設定になっている場合、機密情報や個人情報が外部に漏洩したり、他人の回答に反映されたりするリスクがあります。法人の場合は、オプトアウト設定(学習に利用させない設定)やAPI利用、エンタープライズ版の契約が必須です。

バイアス(偏り)

LLMはインターネット上のデータを学習しているため、そこに含まれる社会的な偏見や差別的な表現を学習してしまっていることがあります。出力された内容が倫理的に問題ないか、人間の目でチェックする工程が欠かせません。

知的財産権

生成されたコンテンツが他者の著作権を侵害していないかという議論は、現在進行形で法整備や議論が進んでいます。特にコード生成においては、既存のライブラリのライセンスを遵守しているか注意を払う必要があります。

効率的なプロンプト作成のコツ

LLMから良い回答を引き出すための指示文(プロンプト)の書き方には、いくつかの定番パターンがあります。

  • 役割を与える: 「あなたはシニアレベルのソフトウェアエンジニアです」といった前提条件を置く。
  • 具体的かつ明確に: 「いい感じにして」ではなく、「〜の形式で、対象は初心者、300文字以内で」と制約を設ける。
  • ステップバイステップ: 「順を追って考えてください」と一言添えるだけで、推論の精度が劇的に向上することがあります(Chain of Thought)。
  • 例示(Few-shot): 望ましい回答の例を1〜2つ提示してから本題に入ると、出力のフォーマットが安定します。
Yachi

プロンプトを一度で完璧にしようとする必要はありません。返ってきた回答に対して「もう少し具体的に」「この部分は削って」と対話を繰り返すことで、徐々に理想の回答へ近づけていくのが、最も効率的な使いかたです。


まとめ:LLMとの付き合い方

  • LLMの本質は、膨大なデータに基づいた「確率的な言葉の予測」である。
  • 「巨大なしりとり」であるがゆえに、論理的な正しさよりも「それっぽさ」が優先されることがある。
  • ハルシネーションを前提に、人間による検証(ヒューマン・イン・ザ・ループ)を必ず組み込む。
  • RAGやプロンプトエンジニアリングといった手法を組み合わせることで、実務上の強力なツールになる。

LLMは私たちの働き方を大きく変える力を持っていますが、あくまでも主導権は人間にあります。「AIが言っているから正しい」と過信するのではなく、その特性を正しく理解し、便利な「道具」として使いこなす姿勢が、これからのIT活用には不可欠です。

この記事を書いた人

生成AIコンサルタント / テックリード

外資系IT企業にて社内の生成AI活用推進と
生成AIプロダクト開発リードを担当。

かつてはWeb系のエンジニアとして、
モダンな技術スタックでのシステム開発から
数百億レコード規模のデータベース運用までを
フルスタックに経験。

「コードも書けるコンサルタント」として、
活用論と実装論の両面から、
現場で使えるIT知識を発信します。

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